2012年12月16日日曜日

企業史料統合データベースのサービス提供が開始された

企業史料統合データベース(Business Archives)のサービス提供が開始された。
このデータ・ベースは、「財務諸表をはじめ営業の概況などが記述され、日本の近現代における企業の経済活動の実態を知る上で最も基礎的な史料である「営業報告書」、企業の事業計画・見通しについて詳細に記述され、数期にわたる比較財務諸表が掲載されていることが多い「目論見書」、そして「営業報告書」の後身ともいうべき「有価証券報告書」」から成っている。
今、トライアル版を雄松堂から提供されて使ってみたが、予想通り充実したすばらしい内容だった。

実は、私は、このデータ・ベースのマイクロフィルム版を他大学で利用していたが、マイクロフィルムの読み取り機にはさまざまな欠陥があり、使いこなすのは容易ではなかった。また、マイクロフィルム版では、どの企業の営業報告書があるかを見つけるのにも、一苦労した。これらの問題は、新しいデータ・ベースで一気に解決した。これで、日本経済史・経営史の研究が格段に進歩するだろう。
研究者以外の人々もぜひ利用していただきたいと思う。また、このデータ・ベースを構築された企業とスタッフの方々に心から感謝したいと思う。

ところで、私は以前のマイクロフィルム版を使って、戦前の日本のコーポレート・ガバナンスが市場中心型であることを示した。また、同じ資料を使って、日本の海外投資が以下のような特徴を持つことを示した。
「第1に、その産業的な構成は、当時のインフラストラクチャである鉄道、電力、金融が、しだいに中心になった。第2に、海外事業活動を担ったのは、主に主要財閥系企業ではなく、新興財閥系企業や独立した企業群であった。第3に、海外で活動する企業は、国策会社や特殊銀行も含め、金融・証券市場で株式を公開し社債を発行する企業であった。第4に、以上の結果として、現地企業の独立性が高い。第5に、これらの企業は、現地各地域の企業と、活発な競争を展開していた。」(私の上記の主張は、2つの英語版著作、Japanese Companies in East Asia: History and ProspectsHistorical Development of Japanese Companies: Corporate Governance and Foreign Investment Expanded and Revised Second Editionで詳しく展開しています)

今後は、新しいデータ・ベースを使って、上記の特徴をさらに明確にしたいと思う。日本の内外では、戦前日本のコーポレート・ガバナンスが財閥中心である、またその海外投資が受け入れ地域の経済発展に寄与しなかったとする主張が、依然として根強い。私のねらいは、これらの偏見や誤解を正すこと、さらに、今日の日本経済と企業の発展のためには、市場を基礎にし、いっそうのグローバル化が必要であることを明らかにする事である。

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2012年11月14日水曜日

特別シンポジウム「日本の物作り技術のゆくえ-鴻海(ホンハイ)=シャープ連携の意味するもの」


日本国際経済学会関西支部では、特別シンポジウム「日本の物作り技術のゆくえ-鴻海(ホンハイ)=シャープ連携の意味するもの」を以下のような要領で開催予定である。ぜひとも多くの方々が出席していただきたい。
二人の報告者 劉仁傑氏(台湾東海大学教授)と中原裕美子氏(九州産業大学准教授)は長く台湾企業の動向を検討している方なので、どのような報告と討論になるか、今から大いに楽しみである。

日時:12月1日(土) 15:00-17:30
場所:関西学院大学大阪梅田キャンパス1004教室 (アプローズタワー10階)
会場電話:06-6485-5611
詳細は日本国際経済学会関西支部のホーム・ページを参照していただきたい。
なお、11月8日の本ブログで紹介した、私の英語版の新著の第6章Business Alliances between Japanese and Taiwanese Companiesは、上記のテーマを検討しているので、私がシンポジウムでは司会を務めることになった。

シャープとホンハイの提携は、シャープの株価の下落にともなって、交渉のスピードが落ちているように見える。一部では、これで提携は行き詰まったなどの憶測も出ている。
しかし、私は、そのような推測は当たっていないように思われる。なぜなら、提携をめざした両社を取り巻く条件が依然として変わっていないからである。シャープはこれまでの液晶製品でコスト削減を進めなければならないし、ホンハイはシャープとの提携が先端技術を獲得しなければならないからである。
また、日本企業と台湾企業の提携(Business Alliances between Japanese and Taiwanese Companies)は、シャープとホンハイだけではなく、多くの日台企業で進められている。それは、両国企業の置かれた環境と、ビジネス・モデルの違いに基づいている場合が多いからである。
詳しくは、上記書第6章を参照していただければ幸いである。

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2012年11月8日木曜日

Japanese Companies in East Asia: History and Prospectsが刊行されました

ほぼ2か月ぶりのBlogです。
この間、以下のJapanese Companies in  East Asia: History and Prospectsの刊行作業がとても忙しく、残念ながらBlogには手が回らなかった。11月5日に作業が完了し、以下のような本がようやく出来上がった。

現在、印刷版がAmazon.comから購入できるようになりましたが、Kindle版の作成にはさらにもう少し時間がかかります。その内容は以下の通りですが、後日、本Blogにも詳細を掲載しますので、ご参照いただけましたら幸いです。
Introduction
Part 1 Prewar Global Economic System and Economic Interdependence between Japan and China
 Chapter 1 Foreign Direct Investment in the Inter-war Period and Japanese Investment in China
 Chapter 2 Trade and the Balance of Payments in Japan and China in the Prewar Global Economic System
Part 2 Current Economic and Business Competition and Alliance among Japan, China and Taiwan
 Chapter 3 Global Infrastructure Investment, Competition, and the Japanese Companies
 Chapter 4 The Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Accident and A New Energy Policy
 Chapter 5 Rapid Growth of Chinese Companies, and the Institutional Investor Role
 Chapter 6 Business Alliances between Japanese and Taiwanese Companies
 Chapter 7 The Euro Crisis and Receding Asian Community

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2012年9月16日日曜日

国会事故調報告書"Message from the Chairman"にとんでもない記述

原発事故に関する調査委員会の報告書を読もうとして、いくつかの資料を調べていて驚いた。
今、原発事故に関する主要な調査委員会は3つある。最も早く組織された「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(委員長:畑村洋太郎)(いわゆる政府事故調)、「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(委員長:黒川 清)(いわゆる国会事故調)、これら公的な調査委員会に対して、民間の調査委員会が、「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」(委員長:北澤宏一)である。
それぞれ重要な報告書であり、今後十分な時間をかけて検討する必要がある。

このうちの国会事故調の報告書の英語版"The National Diet of JapanThe official report of Executive summary The Fukushima  Nuclear Accident Independent Investigation Commission"の"Message from the Chairman"にとんでもない記述がある。
"What must be admitted – very painfully – is that this was a disaster “Made in Japan.”  Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture:  our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity."
原発事故の原因が、反射的な従順さ、権威に異を唱えない、決められたことに固執する、集団主義、島国根性などという日本文化に深く根ざした慣習にあるという。
日本文化がこうした特徴を持つことを何の説明も無しに、"Message from the Chairman"に掲載し、それが原発事故の原因であると主張している。
もし、そうだとすると、今回の事故は不可避であり、これまでにも同様の事故があり、将来また起こることになる。とんでもない個人的な感想である。これがせっかくの国会事故調の報告書の英語版の冒頭に掲載されるとは!
これで日本への誤解がますます増幅されるだろう。

さらに重要なことは、この内容が日本語版には無いことである。委員会の各メンバーや事務局は慎重に検討したのだろうか。「発信箱:原発事故は文化のせい?=福本容子(論説室)」は以下の通り適切に指摘している。
「でも、もっと本質的な問題がある。原子力ムラは本当に日本独特か?「満足できない報告書」という論評で米ブルームバーグは、アメリカの炭坑爆発を例に、安全軽視は日本特有なんかじゃない、と反論している。とんでもない金利不正操作が発覚したロンドンの金融界も、ムラ中のムラだ。」

最後に改めて、私の見解を補足しておこう。日本文化さらには日本企業や日本経済が集団主義や島国根性だとみる考え方は、海外で作り出された神話であり、日本の一部の知識人が十分な検討も無しに受け入れた神話である。事実は全く正反対である。
この点については、私の英語版の著書(2009)と、この秋に出版予定の2冊目の英語版の著書(出版されしだいここにリンクを設定します)を参照していただきたいと思う。
また、機会を改めて、この点についてさらに詳しく説明し、原発事故の原因についても上記の調査報告書をふまえてまとめてみたい。

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2012年9月14日金曜日

上高地、2012年9月、kamikochi


久しぶりに上高地に行くことができた。何年ぶりのことか。
夏休みも過ぎ、観光客が少なくなっているので、上高地の美しさを存分に味わうことができた。

朝7時頃、朝靄の上高地、後ろに焼岳、手前は大正池。湖面には焼岳が映っている。
おなじみの位置からの写真だが、実際にそこに立ってみて味わうのは格別だった。

大正池からの道々が、いつからか、本当によく整備されている。大正池から少し歩いたところにある小さな田代池、ここも池の水はさまざまな色をしている。ずっと立ち尽くしていたくなる。






これもおなじみの河童橋、まだ8時前なので、あのごったがえした河童橋ではなかった。朝靄は一気に無くなり、アルプスが一望できた。
お店もかなり増え、チップ制のトイレをはじめさまざまなところがとてもよく整備されている。また、ルールを無視する観光客も見当たらないように思える。
本当に日本が誇る観光地だ。



河童橋から明神池をめざす北側の道、ここまでくると観光客が少し減り、さらに静かな道となる。この道の前半部に美しい小川、沼があって見逃せない。田代池よりももっと多彩な色をしているように見えた。
明神池からの南側の帰途は、残念ながら見どころが少ない。
こちらに来ると、登山客や上高地をよく知っている人が多いのか、出会う人のほとんどが朝は「おはようございます」の挨拶をする。これは本当に山やここでのすがすがしい習慣だ。





再び河童橋に帰ってくると、もうアルプスには雲がかかっている。あっという間に変化するのが山の天気なのだ。
ここに掲載した写真の中で、景色が最もくっきりと見える。

もう一度、もっと時間をかけて歩き、カメラ技術を磨いて写真を撮ってみたい。
さて、それはいつのことになるのか。





上高地の公式web site (すばらしい写真が多数掲載され、また貴重な情報が得られます)

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2012年9月7日金曜日

竹島領有権問題:「識者の歴史対話」が必要

李明博韓国大統領が大統領としてはじめて日本の竹島に上陸しただけではなく、さらには天皇に謝罪を要求し、この問題に対する日本政府の親書を突き返すという、唐突な行動が次々と起こされた。
ほぼ同じ時期に起こった、香港の団体による日本の尖閣諸島への侵入に対し、中国政府は比較的冷静に、直接の侵入者とは異なった対応を取った。韓国は、中国とは対照的に、大統領自身が民族意識を扇動し、そのためには日韓の共通の利益を踏みにじろうとしているという点で、きわめて異常な事態である。
大統領の在任末期に大統領周辺の汚職が明らかになり、それへの批判を回避するために、反日意識を煽るということがまたもや繰り返された。韓国の経済が急速に発展し、民主主義的に選出された政権が支配するようになったにも関わらず、事態は一向に改善していない。(この点については、週刊ニューズウィークキノネス(国際教養大学教授、元米国務省朝鮮半島担当官)氏の記事がある)
大統領の今回の行動は、日韓関係の現実を無視し、民主主義的なプロセスも経ず、単に人気取り的な行動で、韓国の民主主義が依然として成熟していないことを示していると言わざるをえない。
これに対して、領土問題に反応の鈍かった日本の民主党政権の対応もさすがに明白になり、竹島問題を国際司法裁判所に提起することになった。当然のことと言えるだろう。
しかし、韓国の現状を見る限り、この問題の解決には相当の時間がかかると思われる。
こうした状態を少しでも改善するためには、経済学者をはじめその他さまざまな分野の研究者が、北岡伸一・政策研究大学院大学教授も主張されるように識者の歴史対話を進める必要があると思われる。その場を含め韓国社会に広く、日本の研究者の研究成果を提出し、できるだけ多くの韓国人の理解を得ることが求められる。
その課題は、もちろん第1に竹島問題があるだろう。これは、国際司法裁判所への提訴と一体に進めなければならない。
第2に、現在の日韓の経済関係についてである。韓国経済の発展に不可欠な役割を果たし続けているのは日本である。戦後も一貫してそうであったが、最近では、日韓の通貨スワップ協定は韓国経済が一時的な危機に陥った時に支える大きな役割を果たすだろう。また、日本からの輸出は、今なお韓国の経済を支えている重要な要因である。
第3に、戦前の植民地時代についての評価である。日本はこの時代に巨額の投資を朝鮮全域に行い、朝鮮経済の近代化に大きく貢献した(新保博彦)。この時期に、韓国人による重要な企業も生まれ、韓国の資本主義は大きく発展した。この点については、第三者的な立場でもあるエッカート教授による有名な研究がある。

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日系ホテルの海外戦略:ホテルオークラアムステルダム

たまたまあるツアーに参加して、オランダのホテルオークラアムステルダムに泊まることができた。海外に出て、日系ホテルに泊まったのははじめての経験で、さまざまなことを考える機会を得た。
このホテルは、ホテル自体が五つ星であるだけではなく、フランス料理レストラン「シエルブルー」が2つ星、和食堂「山里」が1つ星、「セールレストラン」が「Big Gourmand」に格付けされているそうである。山里で夕食をとったが、月曜日の夜にもかかわらずなんと満席。来客は圧倒的に現地の人が多いそうである。ヨーロッパでの寿司の人気はすごいようだが、ここでも多くの人が、ほぼ日本の寿司と変わらない寿司を食べている。
また、ホテル滞在中には、コンシェルジュの粋な計らいもあった。24時間制となっている貸し自転車を、時間が限られていると言ったところ、短時間を無料で貸してくれた。その他についてもこまやかな日本的なサービスが行き届いていて、本当に心地よい時間を過ごすことができた。

ところで、日系ホテルは、海外ホテルの進出で、国内で苦戦している。オークラも例外ではないらしい。しかし、オークラの有価証券報告書 (EDINET、ここで有価証券報告書を閲覧できます)のセグメント情報によれば、ホテルオークラアムステルダムは日本の売上高の540億円に対し、売上高が40億円にもなり、唯一情報を開示している重要なセグメントとなっている。日本の他のホテルをみても、これほど重要な海外部門はおそらく無いだろう。
今、電機・半導体産業をはじめいくつかの重要な産業が、特にアジア企業の発展や急速に進む円高に非常に苦戦している。このBlogでもシャープの苦闘とホンハイの提携を取り上げた。
このような事態に対応するには、上記の提携などさまざまな方法があるが、積極的に海外に展開することが、その重要な対策になるだろう。日本経済新聞によれば、円高を背景に海外企業のM&A(合併・買収)が増加している。この傾向はしばらく続くだろう。
ところで、日本のホテルの海外展開は、日本文化の海外展開ともなる重要な役割を担っている。それにともなって、日本的な食生活、日本的なサービスが広がれば、日本への国際的な理解もいちだんと深まるだろう。日本のホテルの海外展開に大いに期待したい。

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2012年8月16日木曜日

DVD「東京裁判」を改めて見直す

昨日は終戦記念日。日本政府は、8月15日を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とし、全国戦没者追悼式を主催している。
この日に当たって、例年のように、DVD「東京裁判」が放映されている。私もすでにこのDVDについて、以前のBlogで以下のように記載したが、わかりにくい位置に置かれているので、改めて掲載し、東京裁判が正しく評価されることを期待したい。

 「7) 12月8日は日米開戦70周年 (2011年12月10日17:41)」
今年は日米開戦から70周年である。
開戦に至った経緯を明らかにする文献が次々と刊行されている。アメリカ側からも、従来の一方的な日本の戦争責任を問うような論調ではなく、開戦に至ったより公平で客観的な研究が発表されつつある。

ところで、戦争の結果として行われた極東国際軍事裁判(東京裁判)が、当時の国際法に基づかない裁判として、また、戦勝国が戦敗国を裁く裁判として、批判を受けているのは、周知の通りである。今、DVD「東京裁判」などを通じて、多くの人が極東国際軍事裁判について改めて考え直すことが必要なのでないかと思う。
ここでは、当時の被告人弁護団の活動についてふれておきたい。特に、ベン・ブルース・ブレイクニー(Ben Bruce Blakeney, 1908年-1963年3月4日)氏の活躍は、特筆すべきものであった。彼らの活躍は、アメリカの民主主義の強さを象徴している。

ブレークニー弁護人の弁護内容を、DVD「東京裁判」の字幕とナレーションで紹介しておこう。
「戦争は犯罪ではない。戦争に関し国際法の法規が存在していることは、戦争の合法性を示す証拠であります。戦争の開始、通告、戦闘方法、終結をきめる法規も、戦争自体が非合法なら全く無意味です。国際法は、国家利益の追及の為に行う戦争をこれまでに非合法と見做したことはない」
「歴史を振り返ってみても、戦争の計画、遂行が法廷において犯罪として裁かれた例はひとつもない。我々は、この裁判で新しい法律を打ち立てようとする検察側の抱負を承知している。しかし、そういう試みこそが新しくより高い法の実現を妨げるのではないか。“平和に対する罪”と名付けられた訴因は、故にすべて当法廷により却下されねばならない」
「国家の行為である戦争の個人責任を問うことは、法律的に誤りである。何故ならば、国際法は国家に対して適用されるものであり、個人に対してではない。個人に依る戦争行為という新しい犯罪をこの法廷が裁くのは誤りである。」「戦争での殺人は罪にならない。それは殺人罪ではない。戦争が合法的だからです。つまり合法的な人殺しなのです。殺人行為の正当化です。たとえ嫌悪すべき行為でも、犯罪としてその責任は問われなかったのです。」
「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪になるならば、我々は、広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。投下を計画した参謀長の名も承知している。その国の元首の名前も我々は承知している。彼らは、殺人罪を意識していたか?してはいまい。我々もそう思う。それは彼らの戦闘行為が正義で、敵の行為が不正義だからではなく、戦争自体が犯罪ではないからです。何の罪科でいかなる証拠で戦争による殺人が違法なのか。原爆を投下した者がいる。この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認したものがいる。その人達が裁いている。」
                                             
70年が過ぎ、日米は新たな絆で結ばれようとしている。それを象徴しているのが、東日本大震災におけるアメリカ軍の貴重な援助活動である。

なお、東京裁判(極東軍事裁判)の資料については、国会図書館の詳しい説明がある。
また、関連する私のBlogには、『昭和天皇独白録』もある。

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2012年7月29日日曜日

「浮世絵の至宝 ボストン美術館秘蔵 スポルディング・コレクション名作選」、Spaulding Collection, Museum of Fine Arts, Boston

遅ればせながら、「浮世絵の至宝 ボストン美術館秘蔵 スポルディング・コレクション名作選」(小学館、2009年)を購入した。スポルディング・コレクション (Spaulding Collection, Museum of Fine Arts, Boston) については、NHKの番組で知っていたが、この本の所在はうっかりして知らなかった。予想通りすばらしい本だった。6章にわたる作品群だけではなく、作品解説と、3つの重要な論考、資料が付いている。これで12,000円、決して高くない。
このコレクションは、アメリカの大富豪スポルディング兄弟が、「作品の質を最優先して金額には糸目をつけない」という方針で明治末~大正時代に蒐集した浮世絵・約6500点からなっている。それらは褪色や紙質の劣化などを避けるため、美術館内での展示すら禁止されていた。
スポルディング・コレクション の作品群で最も有名な作品の1つは、右図の喜多川歌麿「娘日時計」午の刻である。
右側の女性が羽織った薄衣から白い肌が透けて見えている。ところが、すでに所蔵・公開されている作品の多くは、版画の色が褪せて、その状態がよくわからない。例えば、東京国立博物館 東京国立博物館情報アーカイブの作品もそうである。これだけでも、歌麿の作品と、スポルディング・コレクションの保存のすばらしさがわかる。
NHKの番組で、その説明を聞いてはいたが、現物で見て改めてその鮮明さがよくわかった。

もう1枚、この著作の編集者小林忠氏が絶賛している作品の1つを紹介しておこう。左の図の鈴木春信の作品「雪中相合傘」である。小林氏は、「降りしきる雪を吹き墨の手法によって鉛白の白をまいており(現在は黒変しているが)、ほかと異なってユニークな作例である。」(179ページ)と書かれている。

スポルディング・コレクション には、これ以外にも、多くのすばらしい作品群が、極上の保存状態で残されているが、今回デジタル化されて、多くの人が鑑賞できるようになるという。
まずは、この本で十分に味わい、デジタル化されたすべての作品が登場するのを心待ちにしたい。

*****
以上をブログに記載した後、以下のような作品とそれを紹介するサイトを見つけた。掲載されている歌麿作品は少ないが、一段とすばらしいセレクションである。「歌麿 ベストセレクション1-ボストン美術館蔵 スポルディングコレクション」。(2012.8.16)

なお、喜多川歌麿のもうひとつの作品については、私のブログのもうひとつのページ:世界で最も美しい画本:喜多川歌麿、Kitagawa Utamaroをご参照ください。

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2012年6月28日木曜日

IFSAM 2012が開催された、リムリックから

IFSAM 2012が、6月26日からアイルランドのリムリックで開催された。リムリックは、ヨーロッパのほぼ西の端、今まで開催されたパリやベルリンに比べるとかなり小さな都市である。冒頭の2つのKeynote Speechでは、発展途上国の理論的・実践的な役割が強調された。そう言えば、発展途上国からの参加者が非常に多いように思われる。アジアでは、中国からの団体の参加が目立つ。

ところで、ダブリンからリムリックには列車で来た。2時間の列車の旅のすべてで、緑に覆われた一面の牧草地が広がり、牛、羊、馬が無心に草を食む本当に美しい田園風景が見られた。この風景は、ヨーロッパのどこにでも、一歩都市を離れると見られる風景である。残念ながら、日本ではなかなか見られない。

ところで、このような世界的な学会がますます発展し、研究成果の交流が世界的な規模で行われることを期待したい。また、日本人の国際学会への出席が多くなり、日本での研究成果が世界に届けられることを期待したい。さて、私の報告は29日の予定である。どのような質問やコメントが出るか楽しみである。

なお、この大会での報告は、私の著書(2012)の第6章:Business Alliances between Japanese and Taiwanese Companiesとなっています。ご参照いただけましたら幸いです。

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2012年5月29日火曜日

IEAエコノミスト、ファティ・ビロル氏の日本の原発政策への提言


以下は、昨日(5月29日)の読売新聞の記事である。読売新聞のWeb Siteにはなぜか掲載されていないので、全文を掲載する。

「国際エネルギー機関(IEA)のチーフエコノミスト、ファティ・ビロル氏は読売新聞のインタビューに応じ、「原子力は日本で廉価な電気を供給し、経済成長に重要な役割を果たしてきた」と述べ、日本が原子力発電を維持していく必要性を強調した。
  ビロル氏は、日本国内にある50基の原発が止まっている現状について「日本は経済的な面で、第2次世界大戦以来の最も危機的な分岐点に直面している」と警鐘を鳴らした。  第一に、原子力を火力で代替するために中東から化石燃料の輸入量が増加していることが「日本のエネルギー安全保障上も悪影響を及ぼす」と指摘した。
  原油や液化天然ガス(LNG)の高騰で、日本企業はより高いエネルギー価格を払わされ、他国企業との競争条件で不利になるとも述べた。エネルギー価格の高騰は、電気料金の値上げによって消費の減退にもつながるとの見方を示した。
  日本がインフラ輸出戦略の柱として掲げる原子力発電所の海外への輸出にも言及し、「相手国を説得するのが極端に難しくなる」として、日本が脱原発の方向性を強めれば、交渉が難航するとの見解を示した。
  一方、今後の原油価格の動向については「イラク以外に増産余地のある国はなく、(1バレル=100ドルを上回る)3桁台の高い水準で推移する」との見通しを示した。」

ファティ・ビロル氏は、日本の原子力発電に関する現状を簡潔明瞭に捉えている。原発の日本の経済発展に対するこれまでの役割、化石燃料への依存による日本経済への悪影響、日本にとって重要な輸出産業へのダメージなどである。
これらに、製造業大国日本にとって安定した電力供給の重要性、再生可能エネルギーへの依存の困難さ、などのより幅広い検討が付け加えられれば、とも思われる。
メディアを中心とする、福島第一原発事故の影響などについて、科学的な検討に基づかない批判が多い中、このような日本経済の発展のための経済学者からの提言と活発な議論が求められている。
ともあれ、まずはさらに詳しいインタビュー内容が掲載されることを期待したい。
Dr. Fatih Birolの経歴は以下でみられる。http://www.iea.org/journalists/docs/cv_Birol.pdf

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2012年5月3日木曜日

ドイツの太陽電池メーカー Qセルズの破綻


「一時は世界最大の太陽電池メーカーに上り詰めたドイツのQセルズが3日、裁判所に破産を申請した。同国の太陽電池大手の破産申請は昨年12月以降で4社目。」(「独Qセルズが破産申請へ-国内太陽電池大手の経営破綻相次ぐ、4月3日(ブルームバーグ)」
Qセルズは、2010年に世界で第6位、ドイツで第1位の太陽電池メーカーである。福島第一原発の事故が起こり、再生可能エネルギーが注目されているにもかかわらず、関連する企業の倒産や、株価の暴落が続いている。

その原因は、太陽電池メーカーの多くが国の補助金によって成り立っている企業であり、ヨーロッパの金融危機で、補助金の削減が必至だからである。ヨーロッパの金融危機は、一時的には収まっているようには見える時もあるが、依然として解決にはほど遠い。
また、この産業は、参入が比較的容易で、中国企業の参入が相次ぎ、ドイツ企業など先進国企業は競争力を失いつつあるからである。これは日本企業も同様である。2010年には、上位5社のうち、中国企業が4社を占めていた。この中国企業の場合でさえ、その株価は暴落している。例えば、2001年に設立されたSuntechは、2007年12月には85ドルであったが、今日は、わずかに2.7ドルである。
さらに、期待されるもうひとつの再生可能エネルギーである風力企業も事態は同様である。最大のグローバル企業で1世紀以上の歴史を持つVestasの株価は、2008年8月には700 Danish krone (DKK)であったが、今日は48DKKである。風力産業でも中国企業は急成長している。しかし、世界第2位の企業、Sinovel Wind Groupは2011年はじめには、80 Chinese yuan (CNY)であったが、やはり現在は16CNYまで下落している。
このような株価の急落は、再生可能エネルギー企業に対する市場の評価を示している。

日本では、7月1日から「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が発足するが、その価格が高く、それがある程度長期になることが予想される。それは、日本でシャープや京セラなどの既存の再生可能エネルギー企業や、新規に参入するベンチャー企業を一時的には保護し育成することになるかもしれない。しかし、上記のドイツ企業などの状況を見れば明らかなとおり、補助金などに依存した企業は、結局長期的な発展は難しい。
買取制度をできるだけ一時的な制度にし、すみやかに競争的な環境に戻すことが望まれる。また、同時に、再生可能エネルギー企業の現状を踏まえた、現実的で包括的なエネルギー政策が求められる。

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2012年4月25日水曜日

依然として見えない橋下市長のエネルギー政策


やや古くなるが、4月11日の日本経済新聞は、以下のように伝えている。
「関西電力に原発全廃などを求める大阪市の株主提案が10日、確定した。・・・提案を細かく分けることで、他の株主が議案ごとに柔軟に賛否を判断できるようにする狙いとみられる。「原発全廃」は株主利益を損なう可能性があり賛同を集めにくいが、コスト削減につながる「取締役半減」は比較的理解が得られやすい、などと判断したようだ。」
(「大阪市、関電株主提案の内容決定 可決狙い議題細分化、株主賛同狙い書面送付へ」、日本経済新聞電子版、2012/4/11 15:33)

日本経済新聞は、「「原発全廃」は株主利益を損なう可能性があ」るみているが、私は、この提案が、橋下市長(前知事)が推進してきた、関西経済の復活への提案と相容れないと思う。関西経済の復活には、アジア各国の経済と対抗できる最先端の産業を誘致し、雇用を拡大させることが不可欠である。カジノやサービス産業だけでは、幅広い産業の復活には繋がらない。そのためには、安定的な電力の供給が必要である。
大阪府・市だけでなく各自治体は、安定的な電力の確保のために、ただ周辺の原発とその再稼働に反対するだけではなく、自らのエネルギー政策の全体を示す必要がある。再生可能エネルギーのための投資をするのか、あるいは火力発電所に投資するのかすら明確では無い。そのような投資を促進するとすれば、関西電力を含む電力会社に求めるのか、他の企業を誘致するのか、あるいは自治体が自ら出資するのか、についても明らかにすべきである。

よく知られているように、再生可能エネルギーには、安定的な供給に問題がある。福島の事故にもかかわらず、世界の再生可能エネルギー企業の株価は暴落し、一部の企業は倒産している。また、イランや中東の不安定化は、石油価格の高騰をもたらし始めている。このような条件で、原発以外のエネルギーの安定的な拡大は容易ではない。(この点については、近く発表する論文で、具体的な事実を詳しく示したい)
また、日本の産業構造は大きく変化している。最も重要な背景は、これまで日本をけん引してきた電機、自動車が、アジア企業の猛追を受けて後退していることである。ソニー、パナソニック、シャープの業績は著しく悪化した。これは、日本がアメリカを追い上げたことの繰り返しである。こうして、日本はより技術集約的な産業に移行して行くことが求められている。
それが、電力、水道、鉄道、航空・宇宙などのインフラストラクチャ産業である。この産業での日本企業の地位は高まっているし、今後の可能性も大きい。(この点については、私の論文Global Infrastructure Investment, Competition, and the Japanese Company(ここからダウンロードできます)で検討している)同じ電機産業でも、重電部門を重視した東芝、日立などは着実に業績を改善している。

ところで、最新の橋下市長の動きからも、大きな変化は見られない。
橋下市長は政府に、原発から100キロ圏内の都道府県と電力会社が安全協定を結ぶ仕組みを作ることや、使用済み核燃料の最終処理体制の確立などを盛り込んだ8提言を示したという。(「橋下市長ら官房長官に8提言 原発再稼働問題、「国家の危機」と橋下氏」、日本経済新聞電子版、2012/4/24 12:19)
繰り返しになるが、このような提言を行い、原発の再稼働に反対するなら、まず自身の経済政策の柱となるエネルギー政策を明確にすべきである。この政策の曖昧さは、橋下市長の国政のための基本政策となる船中八策が、肝心の外交・安保政策で曖昧さが目立つのと同じである。大阪府・市の改革に大きな成果を挙げつつある橋下氏が責任あるエネルギー政策を提出することを期待したい

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2012年4月11日水曜日

奈良公園の桜

日本の最も美しい季節、桜の満開の季節がやってきました。
奈良公園の桜もそろそろ満開、一部は散り始めています。今日は雨なので、散るのも早くなるかもしれません。今日は、日本の桜を見るために、いつもより外国人観光客が多かったようです。
(Blogの背景は、奈良公園ではなく、生駒山を背景にした桜です)



向こうに若草山と公園一帯を望みながら咲いています











桜と緑が見事にコントラスト、そのうちに奈良公園も緑一色に












そろそろ一部は散り始めています











(2012.4.12追記)
100周年を迎えたワシントンの桜祭りの桜はもう散ってしまったようです。
今年は、桜祭りの一環として、日本を代表する画家伊藤若冲の展覧会、Colorful Realm: Japanese Bird-and-Flower Paintings by Itō Jakuchū (1716–1800)が、National Gallery of Artで開かれています。

改訂版を作成しました。(2013.3.31) 奈良公園の桜、改訂版、Cherry blossoms in Nara Park

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2012年4月7日土曜日

シャープと台湾ホンハイの提携、Alliance between Sharp and Hon Hai


「シャープは3月27日、EMS(電子機器の受託製造サービス)で世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と資本業務提携すると発表した。鴻海グループがシャープ株の約10%を取得し、事実上の筆頭株主となる。」(日経、「シャープ、国際分業で再建急ぐ 鴻海が筆頭株主に」、2012/3/27 23:30
シャープの側のねらいは明確であり、日本の各紙でも詳しく紹介されている。液晶パネルの価格が暴落し、経営が急速に悪化しているからである。ホンハイとの提携で液晶の安定的な供給が可能になる。

ホンハイは世界最大のEMS (Electronics Manufacturing Service, 電子機器の受託製造サービス)として、アップルへの供給をはじめ、時代をリードする製品を次々と世界市場に供給してきた。今や、ホンハイ抜きにして、最新の電子製品は語れない。
しかしながら、実はホンハイの経営もまた苦しい。売上高は台湾電子企業で圧倒的な規模を維持しているが、利益率は決して高くない。最近になってやや低下傾向も見られる。
また、最大の生産基地中国で、賃金の低さや労働条件の悪さが批判の的となり、今改善を進めざるを得なくなっている。これが実現されると、利益率はさらに低下する恐れもある。こうして、ホンハイも日本企業との提携による高度の技術の導入は、急を要する課題なのである。

この提携がどのような結果をもたらすかはまだ明らかではない。今後、シャープからの投資も行われ、相互投資の形態に発展する可能性もある。ホンハイ優位のみが結果となり、シャープのいっそうの衰退がもたらされる可能性も否定できない。
しかし、日本企業にとって台湾企業との提携は、それぞれの得意分野が異なること、などの理由で、国境を越えた提携としては、最も可能性のある提携のひとつであると思われる。したがって、日本企業は、この提携の先に新たな可能性を見つけ出す必要があるだろう。

このテーマについての、私の詳しい最新の研究は、以下をご参照ください。(英語版です、近日中にデータとして掲載します)なお、一部は以下のブログで、日本語で掲載しています。
日本と台湾の関係を広く検討した、私のブログは、本ブログの2012年1月17日をご参照ください。

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2012年3月27日火曜日

日本国際経済学会について


しばらく専門外の記事が中心だったので、少し私の専門に立ち戻ってみたい。

今年の5月に日本国際経済学会第2回春季大会が、10月に日本国際経済学会第71回全国大会が開かれる。
日本国際経済学会は、1950年に創立総会が開かれた、長い歴史と伝統のある学会である。
設立当初の時代は、日本の学会は、いわゆる近代経済学とマルクス経済学に分かれて設立されることが多かった。両者の立場も大きく異なっていた。しかし、日本国際経済学会は、設立当初から両方の立場の研究者が参加し、活発な議論が繰り広げられてきた。
その伝統は今も生きている。例えば、TPPに賛成する研究者も、反対する研究者も参加し、興味深い議論が展開されている。それが、この学会の強みとなっている。
各全国大会や各支部の研究会の、ほぼすべての報告のレジュメ、論文、PowerPointが掲載されているので、ぜひ参照していただきたい。私は、昨年までの約10年間、学会ホームページ(本部版と関西支部版)の作成を担当し、情報の広範囲な開示に努力してきた。なお、今年10月の全国大会のホーム・ページの作成は、私が担当している。
ところで、ギリシャやイタリアでは、金融危機の深刻化にともなって、意見の調整が困難な政党に代わって、研究者が政治の要職に就くという例が出てきた。日本でも、TPPや消費増税をめぐって、政党の議論は混迷を深めている。責任を持って政策を推進する政党が出てくることを期待したいが、ポピュリズム万能の時代には難しいかもしれない。その意味でも学会の役割は非常に大きくなっている。
これからは、学会が、現実的な政策に議論の中心を置くだけではなく、メンバー以外の人々の参加を容易にするような運営が必要だと思う。

3月28日の補足
今日、マリオ・モンティイタリア首相の特別講演会が開かれた。非常に興味深い、日本にとっても重要な内容だった。
講演会のホーム・ページUstreamでの講演内容新聞記事

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2012年3月4日日曜日

「『特攻―空母バンカーヒルと二人のカミカゼ』(M.T.ケネディ著)より」、Maxwell Taylor Kennedy

You Tubeはさまざまな偶然の出会いをもたらしてくれる。
エレーヌ・グリモーの、heleneGrimaudTVもそうだったが、また新たな出会いがあった。『特攻―空母バンカーヒルと二人のカミカゼ』(M.T.ケネディ著)よりである。Maxwell Taylor Kennedyによる"Danger's Hour" (2008)の翻訳を紹介した動画である。

著者は、「本書は、一九四五年五月一一日、神風特攻隊の攻撃によって甚大な被害を受けたアメリカ海軍の航空母艦バンカーヒルの艦上で起きた出来事を描いたものである。」(プロローグ、p.11)
「日本軍の上層部が敗北を充分に認識した上で大勢の若者を神風特攻隊に任命したのは、絶望的な大義のために命を捧げた若者たちの倫理規範が、以後何千、何万年と、人々の自己犠牲精神をかき立て続けるであろうと考えてのことだった。彼らの最後の望みは、未来の日本人が特攻隊の精神を受け継いで、強い心を持ち、苦難に耐えてくれることだった。
現代を生きる私たちは、神風特攻隊という存在をただ理解できないと拒否するのではなく、人の心を強く引きつけ、尊ばれるような側面もあったということを理解しようと努めるべきではないだろうか。」(同、p.24)
第2次世界大戦が終了して70年近く経ち、ようやく戦争に対する客観的な評価が増加しつつある。アメリカを民主主義陣営の盟主とし、日本を独裁国家の代表とするという図式が確実に見直されている。あらゆる分野で、少しずつそのような作業が行われている。この著作も、そのような作品の一つである。ぜひとも多くの人に読んで欲しい本だと思う。
もちろん、著者の見解の一部には、日本へのよく見られる偏見が残っている。「日本人は個の生命は根本的に限られたものである・・・」(同、p.15)しかし、同時に著者は、「しかし、はっきりしているのは、神風特攻隊員のほとんどは、天皇のためなら喜んで死ぬという狂信者ではなかったということだ。」(同、p.19)とも言っている。

ところで、私は、自分自身の研究領域で、戦前の日本のコーポレート・ガバナンスがアメリカのコーポレート・ガバナンスと同様、市場中心型であると説明してきた。(『日米コーポレート・ガバナンスの歴史的展開』(2006))戦後長く日本を支配してきた、戦前日本の経済・企業は財閥中心であるという議論を具体的な資料を駆使して批判し、上記のような主張を展開した。
事実は、日本の市場経済と企業、そして民主主義がしだいに発展し、アメリカに脅威となったために、当時の条件の下では、戦争が不可避になったということである。

2012年2月25日土曜日

過去のlivedoorブログの原稿を掲載しました

私のブログは、当初はlivedoorブログに開設しました。
12月24日以降は、livedoorブログとGoogleブログに同時に掲載していました。
Googleブログへのアクセス数が多いのと、無料なので、本日以降Googleブログに一本化することにしました。
そのため、livedoorブログにしか掲載していなかった、11月20日から12月10日の原稿を、Googleブログの12月24日の開設第1日目のページに掲載しました。
ご参照いただけましたら幸いです。

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2012年2月13日月曜日

エレーヌ・グリモーの、heleneGrimaudTVを見つけた


昨日、以下の文章を書き(現在は重複するので削除)、何度も聞いているうち、エレーヌ・グリモーの、heleneGrimaudTVを見つけた。
なんと彼女のいくつもの演奏作品が掲載されている。演奏時間が1時間近くになるものもある。そして、ラフマニノフからベートーベンまで。新世代の音楽家は、このようにして作品を広げようとしている。
さて、私達のような大学で研究と教育に携わっているものはどのような方法が可能なのか、考えさせられてしまった。

**********
(ほぼ1か月ぶりのBlogです)
今日、エレーヌ・グリモーのモーツァルト:ピアノ協奏曲第19番、第23番、他のCDが到着した。エレーヌ・グリモーは最近あまりにも有名なので、一度聞いてみようと思っていた。Amazonで、英語版が安かったので、よく見もしないで英語版を買った。
すると、CDとともにDVDが1枚付いてにんまり。さっそく見てみると、ピアノ協奏曲第23番の第2楽章の演奏も収録されていた。エレーヌ・グリモーのHPによると、それは、「モーツァルトのピアノ作品の中で最も美しいアダージョ楽章を持つ第23番の崇高な世界が心を打ちます。」私も、モーツァルトの美しいアダージョを、CDではなくDVDで見て、あらためてモーツァルトの欠かせない一面を味わうことができた。
そして、第23番の説明をインターネットで探している内に、You Tubeで、DVDと全く同じ映像に出会った。グラムフォンの作成だった。さて、せっかくDVDは付けてもらったが、やはりYou Tubeで見ることになるような気がする。

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2012年2月12日日曜日

ユニバーシティ・ガバナンスについて


少し古い記事ではあるが非常に興味深い記事があった。

大阪市の橋下徹市長は、市役所内での全会議を原則公開し、市民から寄せられた意見、予算の編成過程などを全てホームページで公表する「オープン市役所(仮称)」を進める方針を決めた。(2012年1月19日06時04分  読売新聞)
これは画期的な方針である。大学でもこのような改革が不可欠である。大学の抜本的な改革、オープンな大学のための最も重要な方策のいくつかを挙げてみよう。

1) 学校法人が外部からの評価に耐える財務情報を公開する
東洋経済は、毎年秋に大学四季報として財務データを公表している。しかし、東洋経済に掲載されているのは主な大学であって、総数は非常に少ない。
ちなみに、私は、自分が所属している大学で、東洋経済の全国平均データを大学のデータと比較し、経営改革の必要性を提起したが、関心を持ってくれた教職員は少なかった。
重要なのは、外部の専門家が評価し、大学の財務的な問題点を明らかにし、改革の方向を示すことだと思う。

2) 教授会の議事録を全面的に公開する
経営側の対応の遅れと同様に、大学改革の遅れの原因となっているのが、教授会のあり方である。
大学の研究と教育が、社会全体と、学生・保護者の求める内容となるためには、外部の意見が教授会に反映することが必要である。今のところ、そのような制度的な保障がほとんど無い。そのためには、まずは教授会の議事録を全面公開し、外部からの批判を受け入れることから始めるべきである。

私は、以上のような課題を、ユニバーシティ・ガバナンスの確立と呼んで、学部長時代から取り組んできた。これもまた、関心を持たれることは少なかった。
ユニバーシティ・ガバナンスの確立は、コーポレート・ガバナンスの確立と同様、きわめて重要な課題となっている。ただ、コーポレート・ガバナンスの場合には、企業は株主のものであるという考えが比較的良く浸透しているが、ユニバーシティ・ガバナンスの場合には、誰のものかが必ずしも十分に明確ではなく、どうしても構成員である教職員のものであるという考えが維持しやすい。しかし、これが大学改革を妨げる最大の障害である。

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2012年1月17日火曜日

台湾総統選挙、日台関係


台湾総統選挙で国民党の馬候補が勝利した。これで、誰もが予想しているように、中国との経済的な関係はいっそう深まるだろう。
また、この結果は、1996年以降の台湾の民主主義が一段と定着していることも示した。
同時に、中国の関係が深まる事への危惧、台湾国内での貧富の格差が拡大しているとの批判が非常に根強いことも明らかになった。

ところで、台湾と日本との関係は急速に強まっている。台湾における日本ブームは広がっている。東日本大地震への台湾の支援は、交流協会に依ると、以下の通りである。(紹介箇所は一部)
「3.資金援助
(1)台湾当局からの資金援助、3月12日、外交部、1億台湾ドルの資金供与を表明。
(2)台湾官民の義捐金
(イ)交流協会在外事務所での義捐金受付
    3月21日より、交流協会台北・高雄事務所において義捐金を受付開始。9月9日現在、約11億円(詳細は台北、高雄事務所ホームページ参照)
(ロ)台湾官民からの義捐金
外交部によると、外交 部等の機関と 民間団体を合わせた義捐金は、9月16日現在、66億6,553万台湾ドル(上記(1)及び(2)(イ)の額を含む、1台湾ドルを2.7円で換算すると約180億円)」

これに対する、日本の人々の感謝は、以下のような形でも行われている。
支援に感謝、台湾まで泳いで横断 福島出身の大学生スイマーら、2011/9/3 13:27日本経済新聞 電子版
「東日本大震災後、台湾から日本に寄せられた支援への謝意を伝えようと、福島県相馬市出身の大学生スイマーらが17日から2日かけて日台間を泳いで横断する。岩手・宮城両県知事の感謝メッセージを台湾側に渡す計画で、台湾側もサポートする。メンバーは「みんなで挑戦する姿勢、あきらめない気持ちも伝えたい」と話している。」

ところで、私は台湾企業と日本企業の連携の動きについて、Business Alliances between Japanese and Taiwanese Companiesと言う英文論文を作成し、Annual Research Bulletin of Osaka Sangyo Universityに投稿し、これからいくつかの学会に報告したいと思っている。近く刊行される予定なので、上記のサイトでご参照ください。

一部を日本語原文で紹介したい。
「このような情勢で、Hon Hai Precision IndustryのTerry Gou氏は、日台企業連合の可能性について、次のように述べている。「1)それぞれの長所を活かせること。日本企業の長所は培った技術と真面目さ、台湾企業のそれは高いフレキシビリティである。(2)知的財産権を尊重すること。我々は決してコピーしないし、ロイヤリティも必ず払う。鴻海もたくさんの知財を保有している。(3)正直で信用を重んじるなど、双方の文化が近いこと。(4)日本企業はブランドを持ち、我々は持たないこと。」(http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110614/192553/)
この発言をふまえて、日台企業連合の可能性をまとめてみよう。1) 日本企業は長い歴史の中で世界的なブランドを確立している。一方、台湾企業はファウンドリーやファブレス、EMSなど、日本の企業とは異なるビジネスモデルを確立し発展したが、その中には、ブランドを持たない場合も少なくない。その意味で、相互補完関係を築くことができる、2) 日台にとって中国がともに大きな役割を果たしているが、台湾企業はすでに中国に強固な基盤を築いている。日本企業にとって社会主義中国への進出は、大きなリスク、いわゆるチャイナリスクを伴う。その点で、台湾は日本が中国に進出する橋頭堡になりうる。3) 日本と台湾とは歴史的に見て良好で緊密な関係、また、それを土台にして、双方で深く根付いた市場経済と企業活動を築いている。」

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2012年1月11日水曜日

『昭和天皇独白録』、The Emperor Showa's Monograph


新たな年の休みに偶然、日本の歴史を理解する上で、あまりにも重要で興味深い本に出会った。『昭和天皇独白録』である。
「「独白録」は、昭和二十一年の三月から四月にかけて、松平慶民宮内大臣、松平康昌宗秩寮総裁、木下道雄侍従次長、稲田周一内記部長、寺崎英成御用掛の五人の側近が、張作霖爆死事件から終戦に至るまでの経緯を四日間計五回にわたって昭和天皇から直々に聞き、まとめたものである。」(p.3)

まず、いくつか重要な内容を紹介しておきたい。
・「大東亜戦争の遠因、この原因を尋ねれば、遠く第一次世界大戦后の平和条約の内容に伏在してゐる。日本の主張した人種平等案は列国の容認する処とならず、黄白の差別感は依然残存し加州移民拒否の如きは日本国民を憤慨させるに充分なものである。又青島還附を強いられたこと亦然りである。」(p.24-5)
・「張作霖爆死の件、・・・この事件あって以来、私は内閣の上奏する所のものは仮令自分が反対の意見を持ってゐても裁可を与へる事に決心した。・・・
田中に対しては、辞表を出さぬかといったのは、「ベトー」を行ったのではなく、忠告をしたのであるけれ共、この時以来、閣議決定に対し、意見は云ふが、「ベトー」は云はぬ事にした。(注:なお「ベ卜ー」とはvetoで、君主が大権をもって拒否または拒絶することをいう。)」(p.28, 30-1)
・「開戦の決定、・・・私は立憲国の君主としては、政府と統帥部との一致した意見は認めなければならぬ、若し認めなければ、東条は辞職し、大きな「クーデタ」が起り、却て滅茶苦茶な戦争論が支配的になるであらうと恩ひ、戦争を止める事に付ては、返事をしなかった。
十二月一日に、閣僚と統帥部との合同の御前会議が開かれ、戦争に決定した、その時は反対しても無駄だと思ったから、一言も云はなかった。」(p.89-90)
・「敗戦の原因は四つあると思ふ。第一、兵法の研究が不充分であった事・・・。第二、余りに精神に重きを置き過ぎて科学の力を軽視した事。第三、陸海軍の不一致。第四、常識ある主脳者の存在しなかった事。」(p.99)
・「結論、開戦の際東条内閣の決定を私が裁可したのは立憲政治下に於る立憲君主として巳むを得ぬ事である。若し己が好む所は裁可し、好まざる所は裁可しないとすれば、之は専制君主と何等異る所はない。
終戦の際は、然し乍ら、之とは事情を異にし、廟議がまとまらず、鈴木総理は議論分裂のまゝその裁断を私に求めたのである。
そこで私は、国家、民族の為に私が是なりと信んずる所に依て、事を裁いたのである。」(p.159-160)

これらの記述から、当時の天皇と政府・軍部、そしてそれぞれの中に、また、日本と諸外国の間に、どのような相違と対立があったかがよくわかる。当時の日本が一体となって戦争への道に突き進んだわけではないし、天皇が、決して現人神としての役割を果たしたわけでもない。また、日本の側に一方的な戦争責任があるわけでもない。
この著作を含む当時のさまざまな文献と資料の研究が進み、多くの人々がこの著作を読み、改めて当時の日本の位置と第2次世界大戦について考える機会が増えて欲しいと思う。
また、私自身も、これを契機に、戦前のコーポレート・ガバナンス・直接投資の研究からより包括的な当時の研究に進みたいと思った。

<関連する私のブログ>
2.26事件を含む『昭和天皇実録 第七』が刊行される、An Official Record of the Emperor Showa Vol. 7 (2016.4.7)
DVD「東京裁判」を改めて見直す (2012.8.16)

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2012年1月2日月曜日

新年あけましておめでとうございます 伊藤若冲とともに、Ito Jakuchu




新年あけましておめでとうございます
 
新しい年は、やはり伊藤若冲を眺めて迎えたいと思う。
最近は新年になると、伊藤若冲についての新たな番組が組まれていてとても嬉しい。
私が伊藤若冲の作品で最初に出会ったのは、最も有名な「動植綵絵」である。その一連の作品に盛り込まれた技術の高さに驚いた。なかでも、当時確認された裏彩色の手法には、全く無知であったのでとても驚いた。この技法の結果、若冲の鳳凰は本当の金色に近い色に輝いて見える。
その鳳凰を見て楽しむのは、想像で胸を膨らませる新年にふさわしいように思える。

ところで、今日は伊藤若冲を早くから紹介している佐藤康宏氏の『もっと知りたい伊藤若冲 改訂版』にふれておきたい。2006年2月に刊行された初版が12刷を数えた後に改訂版として2011年7月に出版された。この種の本で12刷とは、この本が非常に広範囲に読まれたことを示すデータだろう。私も何度も読み、眺めた。

改訂版では、近年発見された「象と鯨図屏風」などを加えて、さらに充実した内容になっている。

ところで、旧版の「描法細見II』(p.58-9)で、佐藤氏は、プライス・コレクションの作品としてしばしば登場する「鳥獣花木図屏風」は、「絶対に若冲その人の作ではない」と断定している。改訂版では、佐藤氏の関連文献が追補されているが、その主張は全く変わっていない。佐藤氏の独自の一貫した主張は、非常に貴重である。最近の科学技術による検討によって、早晩明確な結果が出るように期待したい。

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