2012年4月25日水曜日

依然として見えない橋下市長のエネルギー政策


やや古くなるが、4月11日の日本経済新聞は、以下のように伝えている。
「関西電力に原発全廃などを求める大阪市の株主提案が10日、確定した。・・・提案を細かく分けることで、他の株主が議案ごとに柔軟に賛否を判断できるようにする狙いとみられる。「原発全廃」は株主利益を損なう可能性があり賛同を集めにくいが、コスト削減につながる「取締役半減」は比較的理解が得られやすい、などと判断したようだ。」
(「大阪市、関電株主提案の内容決定 可決狙い議題細分化、株主賛同狙い書面送付へ」、日本経済新聞電子版、2012/4/11 15:33)

日本経済新聞は、「「原発全廃」は株主利益を損なう可能性があ」るみているが、私は、この提案が、橋下市長(前知事)が推進してきた、関西経済の復活への提案と相容れないと思う。関西経済の復活には、アジア各国の経済と対抗できる最先端の産業を誘致し、雇用を拡大させることが不可欠である。カジノやサービス産業だけでは、幅広い産業の復活には繋がらない。そのためには、安定的な電力の供給が必要である。
大阪府・市だけでなく各自治体は、安定的な電力の確保のために、ただ周辺の原発とその再稼働に反対するだけではなく、自らのエネルギー政策の全体を示す必要がある。再生可能エネルギーのための投資をするのか、あるいは火力発電所に投資するのかすら明確では無い。そのような投資を促進するとすれば、関西電力を含む電力会社に求めるのか、他の企業を誘致するのか、あるいは自治体が自ら出資するのか、についても明らかにすべきである。

よく知られているように、再生可能エネルギーには、安定的な供給に問題がある。福島の事故にもかかわらず、世界の再生可能エネルギー企業の株価は暴落し、一部の企業は倒産している。また、イランや中東の不安定化は、石油価格の高騰をもたらし始めている。このような条件で、原発以外のエネルギーの安定的な拡大は容易ではない。(この点については、近く発表する論文で、具体的な事実を詳しく示したい)
また、日本の産業構造は大きく変化している。最も重要な背景は、これまで日本をけん引してきた電機、自動車が、アジア企業の猛追を受けて後退していることである。ソニー、パナソニック、シャープの業績は著しく悪化した。これは、日本がアメリカを追い上げたことの繰り返しである。こうして、日本はより技術集約的な産業に移行して行くことが求められている。
それが、電力、水道、鉄道、航空・宇宙などのインフラストラクチャ産業である。この産業での日本企業の地位は高まっているし、今後の可能性も大きい。(この点については、私の論文Global Infrastructure Investment, Competition, and the Japanese Company(ここからダウンロードできます)で検討している)同じ電機産業でも、重電部門を重視した東芝、日立などは着実に業績を改善している。

ところで、最新の橋下市長の動きからも、大きな変化は見られない。
橋下市長は政府に、原発から100キロ圏内の都道府県と電力会社が安全協定を結ぶ仕組みを作ることや、使用済み核燃料の最終処理体制の確立などを盛り込んだ8提言を示したという。(「橋下市長ら官房長官に8提言 原発再稼働問題、「国家の危機」と橋下氏」、日本経済新聞電子版、2012/4/24 12:19)
繰り返しになるが、このような提言を行い、原発の再稼働に反対するなら、まず自身の経済政策の柱となるエネルギー政策を明確にすべきである。この政策の曖昧さは、橋下市長の国政のための基本政策となる船中八策が、肝心の外交・安保政策で曖昧さが目立つのと同じである。大阪府・市の改革に大きな成果を挙げつつある橋下氏が責任あるエネルギー政策を提出することを期待したい

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2012年4月11日水曜日

奈良公園の桜

日本の最も美しい季節、桜の満開の季節がやってきました。
奈良公園の桜もそろそろ満開、一部は散り始めています。今日は雨なので、散るのも早くなるかもしれません。今日は、日本の桜を見るために、いつもより外国人観光客が多かったようです。
(Blogの背景は、奈良公園ではなく、生駒山を背景にした桜です)



向こうに若草山と公園一帯を望みながら咲いています











桜と緑が見事にコントラスト、そのうちに奈良公園も緑一色に












そろそろ一部は散り始めています











(2012.4.12追記)
100周年を迎えたワシントンの桜祭りの桜はもう散ってしまったようです。
今年は、桜祭りの一環として、日本を代表する画家伊藤若冲の展覧会、Colorful Realm: Japanese Bird-and-Flower Paintings by Itō Jakuchū (1716–1800)が、National Gallery of Artで開かれています。

改訂版を作成しました。(2013.3.31) 奈良公園の桜、改訂版、Cherry blossoms in Nara Park

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2012年4月7日土曜日

シャープと台湾ホンハイの提携、Alliance between Sharp and Hon Hai


「シャープは3月27日、EMS(電子機器の受託製造サービス)で世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と資本業務提携すると発表した。鴻海グループがシャープ株の約10%を取得し、事実上の筆頭株主となる。」(日経、「シャープ、国際分業で再建急ぐ 鴻海が筆頭株主に」、2012/3/27 23:30
シャープの側のねらいは明確であり、日本の各紙でも詳しく紹介されている。液晶パネルの価格が暴落し、経営が急速に悪化しているからである。ホンハイとの提携で液晶の安定的な供給が可能になる。

ホンハイは世界最大のEMS (Electronics Manufacturing Service, 電子機器の受託製造サービス)として、アップルへの供給をはじめ、時代をリードする製品を次々と世界市場に供給してきた。今や、ホンハイ抜きにして、最新の電子製品は語れない。
しかしながら、実はホンハイの経営もまた苦しい。売上高は台湾電子企業で圧倒的な規模を維持しているが、利益率は決して高くない。最近になってやや低下傾向も見られる。
また、最大の生産基地中国で、賃金の低さや労働条件の悪さが批判の的となり、今改善を進めざるを得なくなっている。これが実現されると、利益率はさらに低下する恐れもある。こうして、ホンハイも日本企業との提携による高度の技術の導入は、急を要する課題なのである。

この提携がどのような結果をもたらすかはまだ明らかではない。今後、シャープからの投資も行われ、相互投資の形態に発展する可能性もある。ホンハイ優位のみが結果となり、シャープのいっそうの衰退がもたらされる可能性も否定できない。
しかし、日本企業にとって台湾企業との提携は、それぞれの得意分野が異なること、などの理由で、国境を越えた提携としては、最も可能性のある提携のひとつであると思われる。したがって、日本企業は、この提携の先に新たな可能性を見つけ出す必要があるだろう。

このテーマについての、私の詳しい最新の研究は、以下をご参照ください。(英語版です、近日中にデータとして掲載します)なお、一部は以下のブログで、日本語で掲載しています。
日本と台湾の関係を広く検討した、私のブログは、本ブログの2012年1月17日をご参照ください。

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