2017年8月7日月曜日

藤井厳喜他『日米戦争を起こしたのは誰か』、『フーバー大統領回顧録』紹介(1)

『裏切られた自由(フーバー大統領回顧録)』(Freedom Betrayed)を紹介した書籍は、現在2つある。このブログと次のブログで順に紹介したい。
まず、藤井厳喜・稲村公望・茂木弘道著、 加瀬英明序『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』(勉誠出版、2016年1月刊)である。

目次は以下の通りである。
序 加瀬英明
鼎談 "FREEDOM BETRAYED" をめぐって 藤井厳喜、稲村公望、茂木弘道
 第一章 誰が戦争を仕掛けたのか
 第二章 過ったアメリカの政策
 第三章 戦争を引き起こした狂気
ウェデマイヤー将軍の回想ー第二次大戦に勝者なし 藤井厳喜
いま明らかになった大東亜戦争の真相 稲村公望
日米戦争は狂人の欲望から 茂木弘道

上記書第二章に、"Freedom Betrayed" (フーバー回顧録)の、ある意味で要約ともなっているDOCUMENT 18 "A Review of Lost Statesmanship--19 Times in 7 Years” 1953, pp.875-883の詳しい紹介がある。内容は以下の通りである。赤字の箇所は、日本と特に関係が深い箇所である。

失われた手腕(「誤り」:藤井氏の訳)
1 一九三三年の国際経済会議の失敗、2 ソ連承認、3 ミュンヘン融和の成功と失敗、
4 英仏の『ポーランドとルーマニア』への独立保証、5 アメリカの宣戦布告なき戦争、
6 警戒心を持った忍耐政策を取らなかった、7 ソ連共産主義を助けた事、
8 一九四一年七月の日本への経済制裁、9 一九四一年九月近衛和平提案を拒絶した事、
10 日本との三ヶ月の冷却期間を拒絶した事、11 無条件降伏の要求、
12 一九四三年一〇月のバルト三国とポーランド東部のソ連への譲渡、
13 一九四三年一二月、七つの国家にソ連の傀儡政権の押し付けを認めてしまった事、
14 ヤルタの秘密協定、15 一九四五年五月~七月日本の和平提案を拒否したこと、
16 トルーマンのポツダムでの決断、17 原爆投下、
18 毛沢東に中国を与えたこと、19 戦後世界に共産主義の種を撒いてしまった事、
(藤井厳喜他, pp.69-135、以下も同様、なお上記のタイトルは、原書タイトルより説明的に追記されている)

上の赤字の項目について、フーバーの主張を詳しく見てみよう。
8 「その経済制裁(1941年7月の日本に対する:新保注)は、弾こそ射って射なかったが本質的には戦争であった。ルーズベルトは、自分の腹心の部下からも再三に亘って、そんな挑発をすれば遅かれ早かれ報復のための戦争を引き起こすことになると警告を受けていた」
9 「皮肉に考える人は、ルーズベルトは、この重要ではない問題(満州の返還)をきっかけにして自分の側でもっと大きな戦争を引き起こしたいと思い、しかも満州を共産ロシアに与えようとしたのではないかと考えることになるだろう」
10 「スティムソンの日記が明らかにしたように、ルーズベルトとその幕僚は、日本側から目立った行動が取られるように挑発する方法を探していたのだ。だから、ハルは、馬鹿げた最後通牒を発出して、そして我々は真珠湾で負けたのだ。」
11 「無条件降伏の要求は、敵国の軍国主義者や扇動者に利用され、ドイツ、日本、イタリアとの戦争を長引かせた。」

14 「スターリンが一二の国々の独立に対して干渉を加えることを追認しただけではなく、数世代に亘って国際関係に危険をもたらす、悪しき勢力の動きを助長するような秘密の協定が多数結ばれた。
15 「日本との和平はただひとつの譲歩で連成できた。それは天皇の地位の保全である。・・・。米国側が、最終的にこの条件を受け入れたのは、数十万の人命が犠牲になった後であった。」
16 「アメリカの経験ある多くの専門家が勧告した、天皇を維持することを許す救済条項を入れないで、無条件降伏を要求したのである。日本側は、回答として、この条件のみを求めたが、原子爆弾が投下された。そして、最後になって、この条件が受け入れられた」
17 「・・・トルーマンが日本人の上に原子爆弾を落とすという非道徳的な命令を下したことである。日本は繰り返して平和を求めていたにもかかわらず。これはアメリカの全ての歴史のなかで、他に比較するもののない残忍な行為であった。これはアメリ力の良心に対して、永久に重くのしかかるであろう

これらの文面から、フーバーは日米間の和平の動きを支持し、開戦の動きを止めようとしたことがわかる。また、一旦戦争が始まると、それが早期の講和に繋がるように期待していたと言えるだろう。

では、以上からもわかるフーバー大統領の基本的な考えはどのようなものだったろうか?まず何よりも共産主義への一貫した厳しい批判である。その批判は、ルーズベルトのソ連の承認に始まり、戦後処理のすべての過程に亘っていた。その批判は、ルーズベルトの政策が、戦後の共産主義体制の拡大、東西冷戦をもたらしたことにも向けられていた。
フーバーはまた、ルーズベルトのニューディール政策が十分な成果を挙げておらず、それに代わって経済のより早い回復のため戦争の開始をめざすようになったと考えている。
しかし、フーバーは、ルーズベルトの考えが、アメリカ国外での戦争、紛争への不干渉という、アメリカの伝統的な政策とも相容れないと見なしていた。

『裏切られた自由』は、日本などの戦争責任のみを一方的に断罪する第2次世界大戦に対する伝統的な見方に根本的な見直しをせまるものである。藤井厳喜氏らの『日米戦争を起こしたのは誰か』はその紹介とともに、独立した論文「ウェデマイヤー将軍の回想ー第二次大戦に勝者なし」の紹介などもあり、より幅広い検討が可能になっている。

多くの方が、まずこの書籍とともに、次回のブログで取り上げる渡辺惣樹『誰が第二次世界大戦を起こしたのか: フーバー大統領『裏切られた自由』を読み解く』も読んでいただき、膨大な『裏切られた自由(フーバー大統領回顧録)』にまで読み進んでいただきたいと思う。

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