2018年3月7日水曜日

日英語版、写真満載の『Man'yō Luster <万葉集> 新装版』

Man'yō Luster <万葉集> 新装版』(リーピ英雄:英訳、中西進:日本語現代語訳、井上博道:写真、高岡一弥:アートディレクション、パイインターナショナル、2014年
万葉集の原文とその現代語訳、英訳、そしてその歌に関連の深い写真が一体となった美しい本(文庫本サイズ)である。
以前に元の大きな版を見たまますっかり忘れていたが、たまたま奈良の「幡・INOUE夢風ひろば東大寺店」で再発見した。
ぜひ多くの方に読んでいただきたい本である。外国人への贈り物にもぴったりのように思える。
今回のブログでの紹介では、スペースの都合もあり、一部を除いて、いくつかの代表的な万葉集の歌と英語訳、関連づけされている写真のみを載せることにした。

秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿鳴かむ山そ高野原の上
If autumn were here
these would be mountains
as we see them now,
where the deer cries
in longing for his wife-
on these high fields
(写真:奈良市雑司町 正倉院, 76-7、数字はページ数、以下同じ)

田児の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける
Coming out
   from Tago’s nestled cove,
I gaze:
   white, pure white
the snow has fallen
on Fuji’s lofty peak.
(写真:興津川河口沖より富士山を眺める, 164-5)

あをによし寧楽の京師は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり
The capital at Nara,
   beautiful in blue earth,
flourishes now
like the luster
of the flowers in bloom.
(写真:奈良市川上町奈良奥山ドライプウェイより, 176-7)



世の中は空しきものと知る時しいよよますますかなしかりけり
When I realized
this world is an empty thing,
then all the more I felt
a deeper and deeper sorrow.
 「空しきもの」をリービ英雄氏は「an empty thing」と訳している。万葉集の時代にどの程度仏教思想が浸透しているか、私にはよくわからないが、この訳で良いのだろうか?中西進氏の現代語訳も「空(くう)」となっている。リービ英雄氏の『英語で読む万葉集』(岩波新書)を調べてみたが、この歌は掲載されていなかった。

雪の色を奪ひて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも
The plum flourishes now,
its bloom is pillaging
the white from the snow.
Oh for someone to see it!
(写真:奈良市鹿野園町, 276-7)

ここに掲載したのはごく一部である。本文のページ数は380となっている。ぜひ手にとってご覧いただきたい。

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