2017年12月23日土曜日

『若冲の世界』(TJmook, 狩野博幸監修)

前回のブログ『北斎肉筆画の世界』で新たに発見された北斎の作品を紹介したが、今回は『若冲の世界』(TJmook, 狩野博幸監修)で、若冲の新たに発見された作品を紹介したい。

孔雀鳳凰図(双幅)の「孔雀図」、1755年頃の作
(次の「鳳凰図」と一対)である。
「1926年の11月に刊行された美術雑誌『國華』432号に写真が掲載され、1933年に国の重要美術品に認定されて以来、長らく行方知れずとなっていた本作は、2015年に83年ぶりに発見され」た。

これとほぼ同じ構図の作品が「動植綵絵」のひとつ、1760年頃の作「老松孔雀図」である。「邪気を払うとされる孔雀と不老不死の象徴である松の、非常におめでたい組み合わせで構成された一枚」と言われる。

次の「鳳凰図」と「老松白鳳図」の比較よりも、両者は構図も色彩もとてもよく似ている。
しかし、「老松孔雀図」の裏彩色で描かれた孔雀の白さと金地、羽根の先端の金地が緻密に表現され鮮明な色使いになっている。また、孔雀鳳凰図の「孔雀図」の白い牡丹が、「老松孔雀図」では赤色に代わり、松の一部に使われている深い青色が、全体を深い色合いに変えている。

孔雀鳳凰図(双幅)の「鳳凰図」


やはりこの図にも、「動植綵絵」に同様の構図の作品がある。「動植綵絵」を代表する「老松白鳳図」である。1765-66年に制作された。

こちらは構図としては同じだが、色合いが大きく異なっている。
何よりも鳳凰の羽根が全体で白に変わり、裏彩色で描かれた羽根の間から金地がのぞき、羽根全体が光り輝くように見える。
「老松白鳳図」では、鮮やかな青の使われている部分が少なくなっている。背景もやや暗くなっていて、鳳凰の輝きを対照的にしようとしているかのように見える。

最近、見つかった作品として注目されたのは、「象と鯨図屏風」(六曲一双)、最晩年の1797年作である。「2008年の夏に、北陸の旧家に伝わっていた本作の存在が初めて世に知られることになった。翌年に滋賀のMlHO MUSEUMで初公開され、脚光を浴びた作品である。」
『若冲の世界』p.52-3では、図がページをまたがって印刷されているので、画像はMiho Museum通信「Shangri-La」, vol.24を使った。

象と鯨を若冲が実際に見たかどうか。「Shangri-La」は見た可能性があると推測している。
たとえ見たとしても、図の中の象と鯨の実際の姿とは異なっている。鯨の背びれ、象の白さや大きな丸い耳などである。この図にはかなり多くの想像が入っていると考えるのが自然だろう。

しかし、それはむしろ若冲のすごさでもある。最晩年になっても想像力が衰えず、これまでには無かった対象を選び、それらに新たな生命力を吹き込んだと言える。
また、全体が墨で描かれ、上記の色彩あふれる作品とは対照的な美しさである。

以上の画像は、『若冲の世界』で紹介されたもののごく一部に過ぎない。大きな判型で、若冲の多くの作品を、鮮明な画像で紹介している同書は、ぜひおすすめしたいMookである。