2017年7月24日月曜日

劉暁波の死を悼む

中国の民主化をめざして活動してきた劉暁波氏が、肝臓がんのため、7月13日中国遼寧省瀋陽の病院で亡くなった。服役中に患ったがんの治療を国外でという本人と家族の希望を、中国政府は受け入れなかった。

氏の死を悼む行動や出版は、残念ながら決して多くはなかった。出版としては、ニューズウィーク日本版(7月25日号)がSpecial Reportを掲載し、「彼の早過ぎる死に中国政府は重大な責任を負う」と書いた。

劉暁波氏の構想は、彼の著書「天安門事件から「08憲章」へ」によく表れている。私は私のブログ「決して忘れてはならない天安門事件と08憲章、Tiananmen Square protests of 1989 and Língbā Xiànzhāng」(2015年6月1日(月曜日))で詳しく紹介した。

改めて以下に目次を示すので、ぜひ多くの方が読んでいただきたいと思う。
以下は、08憲章の概要である。(同書、209-227ページ)
「一 前書
二、我々の基本理念
 中国の未来の運命を決定するこの歴史の岐路に立ち、百年来の近代化の歩みを省みて、下記の基本理念を再び言明する必要がある。
 自由、人権、平等、共和、民主、憲政
三、我々の基本的主張
 これにより、我々は、責任を担う建設的な公民の精神に基づいて、国家の政治制度、公民の権利と社会発展の各方面について、以下の具体的な主張を提起するものである。
 1、憲法改正、2、分権の抑制的均衡、3、立法による民主、4、司法の独立、5、公器の公用、6、人権の保障、7、公職の選挙、8、都市と農村の平等、9、結社の自由、10、集会の自由、11、言論の自由、12、宗教の自由、13、公民教育、14、財産の保護、15、財税改革、16、社会保障、17、環境保護、18、連邦共和、19、正義の転換
四、結語」

重要なのは、最後に「署名規則」があり、「一 本憲章は公開署名とする。二 本名または常用のペンネームで署名し、所在地と職業を明記されたい。」と記述されたことであり、署名者は303名(第一次)となっていた。

憲章が公表されてほぼ10年が経過したが、中国の民主化をめぐる状況はいっそう悪くなっている。中国国内での民主化運動に対する徹底的な弾圧、インターネットの管理と統制はさらに強まり、対外的には南シナ海などのへ海洋進出、香港の一国二制度の形骸化、台湾の外交活動への妨害、日本への挑発的な軍事行動、などである。
こうした行動を支えているのは、中国経済の発展である。中国経済の影響力は、内部に深刻な問題を抱えながらも拡大している。中国経済に依存が深まっている日本や、ヨーロッパ諸国が、民主化運動を弾圧する中国政府に批判を抑制している。

しかし、民主化運動への弾圧と独裁政治はいつまでも続けることはできない。弾圧を続ける過程で、政治的な支配層や有力な企業に腐敗や不正が拡大し続けるからである。経済成長の鈍化、格差の拡大とともに、民主化への移行が現実となるだろう。そのときに再び劉暁波氏の遺産が再び脚光を浴びるに違いない。

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2017年7月12日水曜日

アジア企業の最新ランキング:インド・台湾企業の躍進

 日本経済新聞社は、2017年6月にアジア企業の最新のランキングを発表した。「Asia300」の327社を対象に成長力(2016年度までの5年間の売上高と純利益の平均増減率)、収益性(16年度の売上高純利益率)、資本効率(同自己資本利益率=ROE)、安全性(同自己資本比率)を独自に点数化し、総合的に優れた企業をランキングしている。最上位のLargan Precisionを100とし、各企業はそれに対する比率で表されている。
 この調査について、私は論文「アジア企業の最新ランキングとインド企業の躍進」で詳しく検討した。以下はその簡略版である。
 表1(簡略版)は、上位15社と上記の経営指標、筆頭株主を示している。ここで注目すべきなのは、15社のうちインド企業が5社、台湾が4社となっていること、インド企業は情報技術で優位に、台湾企業はTSMCやLARGAN Precisionだけでなく多様な企業を含むことである。
 ところで、アジア企業には政府系企業(背景が緑色)、外国企業系企業(オレンジ色)、財閥系企業(青色)が有力であると見られてきたが、中国などを除けば次第に後退していることもわかる。


  上記論文では、アジア企業で最も注目されているインド企業についても詳しく検討している。表4(簡略版)はアジア企業と同じ指数に基づくインド企業上位10社を示している。上位5社については表1で示した。6位以下では、LupinなどのPharmaceuticalsの企業や、日本のスズキの子会社Maruti Suzukiなどの活躍が注目される。






輸出志向工業化の開始以降続いてきたアジア企業の躍進は、またひとつ新たな段階を迎えようとしている。先行したアジアNIES、ASEAN、中国などを追跡してきたインド企業が、新たなIoT(Internet of Things)革命の進化の過程で新しいけん引役となっている。インド企業は経営効率の面でアジア企業の最先端を走っているだけではなく、市場と幅広い株主を基盤にした企業の発展もけん引している。
 詳しくは、上記の私の論文を参照していただけましたら幸いです。

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