2017年4月16日日曜日

トランプ大統領登場の背景(3)飯山雅史『アメリカの宗教右派』を読む

キーワード(Key Words): 宗教右派(the religious right)、福音派(evangelicals)、モラル・マジョリティ(the Moral Majority)、ポピュリズム(populism)

トランプ大統領の登場と、アメリカ政治における「保守化」の進行は、アメリカの宗教の動向までさかのぼらなければ理解できないように思われる。その課題を理解する重要な著作2つを、2回のブログに分けて紹介したい。

まず、飯山雅史『アメリカの宗教右派』(中公新書ラクレ、2008年)である。
目次は以下の通りである。
第1章 プロテスタントとアメリカ、第2章 プロテスタント大分裂、
第3章 リベラルの時代、第4章宗教右派は何を求めているのか、
第5章 宗教右派の勃興とモラル・マジョリティー、
第6章 確立した宗教右派運動とキリスト教連合、
第7章 ブッシュ政権と宗教右派の絶頂期、
第8章 21世紀アメリカの宗教勢力地図、
第9章 宗教右派の停滞と福音派の影響力。

著者はタイトルにもあるキーワードである宗教右派を次のように説明している。
「・・・宗教右派とは、中絶反対などの過激な政治運動をする宗教指導者や団体をまとめて言うための総称だ。・・・一方で、宗教右派の主張に共鳴して、選挙の時には保守的な共和党候補を支援する人たちは宗教保守(層)と呼ぶことにする。」(p.119)

宗教右派の中心である福音派については、次の通りである。
「福音派を探し出すもう一つの方法は、南部バプチスト連盟など、伝統的に福音派とされる教派をリストアップして、そこに所属している信徒を「福音派」と定義することだ。」「・・・特に断らない限り、「福音派」とは、白人福音派のことだ。」(ともにp.175)

上の表(p.176、表の原出所については同書を参照のこと)によれば、白人福音派は少しずつではあるが増大し、全成人人口の24.6%に達している。他方、主流派プロテスタントは1944年の44.4%から2004年の18.7%に激減している。

ところで、福音派は非常に深く政治に関与しつつある。その政治との関係は、右の図(p.177)が示している。近年、福音派での共和党支持は増大している。
同様の趣旨の図は、主流派についてはp.188、カトリックについてはp.192、黒人プロテスタントについてはp.193で示されている。

では、なぜ宗教保守層が影響力を拡大したのだろうか。著者は次のような見解を紹介する。
「(ウィルコックス教授によれば)宗教保守層が膨張した理由は単純で、リベラルの行き過ぎに反発していた国民の数が多かっただけだということだ。
もう一つの分析は、宗教右派運動はポピュリズムの反乱だというものだ。」(p.200)

「そうした”声なき多数派”の反乱は、宗教に限ったものではなかった。少数派積極優遇政策によって「逆差別」を受けたと感じ、”福祉の女王”が自分たちの税金で優雅な生活をしているのではないかと疑う白人中間層には、リベラルの時代に”進歩”とされたもの全般に対して反感を抱く気持ちが広がってきた。」(p.201)

最後に、著者は「こうして、両党(共和・民主、(補足))が福音派へのアピールを競い、新たな政策を打ち出していけば、福音派の関心と政治意識の幅も広がっていくだろう。その相乗効果が、米国政治に、これまでの「保守」と「リベラル」の枠組みを超えた新たな地平を開いていくと期待することは、あまりにも楽観的か、あるいは能天気すぎるだろうか。」(p.243)
この本が出版されたのが2008年、それから10年近くたっているが、事態は新たな地平よりも逆方向に動いていることを示す、トランプ大統領の登場となっている。

しかし、著者の楽観的な見通しが適切ではなかったとは言え、アメリカの宗教右派とその主張などを詳しく取り上げたこの著書の意義は増すばかりである。宗教離れが著しい日本において、最大の同盟国アメリカで起こっている宗教の政治への積極的な参加と劇的な変化を学ぶことは、とても重要な課題となっていると思われる。

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