2017年3月21日火曜日

トランプ大統領登場の背景(1)「アメリカ分裂―数字から読みとく大統領選挙」を読む(1)

トランプ大統領登場の背景を探ることは現在のとても重要な課題である。このテーマに迫った本が出版された。井田正道「アメリカ分裂―数字から読みとく大統領選挙」(明治大学出版会、2017年)である。
まず、目次は以下の通りである。
序章 アメリカの政治制度
第1章 ”合州国”を分解する
第2章 揺らぐ?共和党の牙城ー南部政治の展開ー
第3章 存在感を増すマイノリティ集団ーヒスパニックの動向ー
第4章 苦しみながらもオバマ再選ー2012年選挙ー
第5章 アメリカ分裂を印象づけた2016年選挙

トランプ大統領の登場は、マスコミや調査機関、多くの研究者の予想を覆すものだった。しかし、マスコミや調査機関はその判断のどこに誤りがあったのか未だに十分な検討は行っていないように思える。このような事態を前に、トランプ大統領の登場を、出来るだけ具体的な数字で明らかにしていこうというのが、本書のねらいである。

このブログでは、「アメリカ分裂」(以下では同書とする)の主要な図表をわかりやすく作りかえ、そのねらいを紹介したい。なお、すべての表はクリックして拡大してご覧ください。

第1章表1.2は、全州の社会的背景を一覧にしているが、そのうち所得中位置とジニ係数の上位5州と下位5州をまとめた。(データは2010年)なお、左から2番目の欄は、国勢調査に基づく州別区分を示している。(州区分ついては、Census Regions and Divisions of the United Statesを参照)
所得中位置の額が少ない州には南部の各州が並び、所得格差の大きさを示すジニ係数の大きな州には、北東部3州、南部2州が入っている。


経済的な地位が政治的な意思に強く結びついているとは言えないが、このデータは基礎的なデータとして重要である。

同じ第1章表1.3, 1.4の各州の政治的態度についてのデータを、表1.3では保守ーリベラル、表1.4では共和ー民主の数値の上位5州と下位5州を一覧にした。(データは2008年)
イデオロギー態度では、保守ーリベラルの数値が高いのは南部諸州、低いのは北東部各州が多い。政党帰属意識では、共和ー民主の数値が高いのには、西部と中西部が占め、低いのは北東部各州がやはり多い。

これらのデータをもとに、同書では各州の特徴付けがp.29-40で詳しく行われている。

第2章は南部の分析に充てられている。同書表2.1が示しているように、南部は最も人口変動率が高く、2010年には全人口の37.1%を占めている。
表2.9によれば、共和党が大きく増加しているのは、南部West South Central(WSC, 計4州)と南部East South Central(ESC, 計4州)のうちの掲載された州である。南部South Atlantic(SA、計9州)では、共和ー民主の数値が、20年間にあまり変わっていない。

章題は「揺らぐ?共和党の牙城」となっているが、まずは右の特徴をみておく必要がある。また、p.64のこの表の説明は今ひとつ不明確である。

次に第3章では、近年急速に増大しているヒスパニックが検討されている。
表3.3で注目すべきなのは、ヒスパニックの投票行動の標準偏差が、民主党と共和党への投票に限らず高いことである。それは、ますます増大する彼らがどのように投票するかが、アメリカの今後に大きな影響を与えることが予想される。

以上の検討は2012年までのデータに基づいており、2016年の大統領選挙については第5章で扱われる。第5章と、私の問題整理は、次のブログで検討したい。あわせて参照いただければ幸いです。

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