2012年9月16日日曜日

国会事故調報告書"Message from the Chairman"にとんでもない記述

原発事故に関する調査委員会の報告書を読もうとして、いくつかの資料を調べていて驚いた。
今、原発事故に関する主要な調査委員会は3つある。最も早く組織された「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(委員長:畑村洋太郎)(いわゆる政府事故調)、「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(委員長:黒川 清)(いわゆる国会事故調)、これら公的な調査委員会に対して、民間の調査委員会が、「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」(委員長:北澤宏一)である。
それぞれ重要な報告書であり、今後十分な時間をかけて検討する必要がある。

このうちの国会事故調の報告書の英語版"The National Diet of JapanThe official report of Executive summary The Fukushima  Nuclear Accident Independent Investigation Commission"の"Message from the Chairman"にとんでもない記述がある。
"What must be admitted – very painfully – is that this was a disaster “Made in Japan.”  Its fundamental causes are to be found in the ingrained conventions of Japanese culture:  our reflexive obedience; our reluctance to question authority; our devotion to ‘sticking with the program’; our groupism; and our insularity."
原発事故の原因が、反射的な従順さ、権威に異を唱えない、決められたことに固執する、集団主義、島国根性などという日本文化に深く根ざした慣習にあるという。
日本文化がこうした特徴を持つことを何の説明も無しに、"Message from the Chairman"に掲載し、それが原発事故の原因であると主張している。
もし、そうだとすると、今回の事故は不可避であり、これまでにも同様の事故があり、将来また起こることになる。とんでもない個人的な感想である。これがせっかくの国会事故調の報告書の英語版の冒頭に掲載されるとは!
これで日本への誤解がますます増幅されるだろう。

さらに重要なことは、この内容が日本語版には無いことである。委員会の各メンバーや事務局は慎重に検討したのだろうか。「発信箱:原発事故は文化のせい?=福本容子(論説室)」は以下の通り適切に指摘している。
「でも、もっと本質的な問題がある。原子力ムラは本当に日本独特か?「満足できない報告書」という論評で米ブルームバーグは、アメリカの炭坑爆発を例に、安全軽視は日本特有なんかじゃない、と反論している。とんでもない金利不正操作が発覚したロンドンの金融界も、ムラ中のムラだ。」

最後に改めて、私の見解を補足しておこう。日本文化さらには日本企業や日本経済が集団主義や島国根性だとみる考え方は、海外で作り出された神話であり、日本の一部の知識人が十分な検討も無しに受け入れた神話である。事実は全く正反対である。
この点については、私の英語版の著書(2009)と、この秋に出版予定の2冊目の英語版の著書(出版されしだいここにリンクを設定します)を参照していただきたいと思う。
また、機会を改めて、この点についてさらに詳しく説明し、原発事故の原因についても上記の調査報告書をふまえてまとめてみたい。

ブログのTOPブログの目次新保博彦のホームページ

2012年9月14日金曜日

上高地、2012年9月、kamikochi


久しぶりに上高地に行くことができた。何年ぶりのことか。
夏休みも過ぎ、観光客が少なくなっているので、上高地の美しさを存分に味わうことができた。

朝7時頃、朝靄の上高地、後ろに焼岳、手前は大正池。湖面には焼岳が映っている。
おなじみの位置からの写真だが、実際にそこに立ってみて味わうのは格別だった。

大正池からの道々が、いつからか、本当によく整備されている。大正池から少し歩いたところにある小さな田代池、ここも池の水はさまざまな色をしている。ずっと立ち尽くしていたくなる。






これもおなじみの河童橋、まだ8時前なので、あのごったがえした河童橋ではなかった。朝靄は一気に無くなり、アルプスが一望できた。
お店もかなり増え、チップ制のトイレをはじめさまざまなところがとてもよく整備されている。また、ルールを無視する観光客も見当たらないように思える。
本当に日本が誇る観光地だ。



河童橋から明神池をめざす北側の道、ここまでくると観光客が少し減り、さらに静かな道となる。この道の前半部に美しい小川、沼があって見逃せない。田代池よりももっと多彩な色をしているように見えた。
明神池からの南側の帰途は、残念ながら見どころが少ない。
こちらに来ると、登山客や上高地をよく知っている人が多いのか、出会う人のほとんどが朝は「おはようございます」の挨拶をする。これは本当に山やここでのすがすがしい習慣だ。





再び河童橋に帰ってくると、もうアルプスには雲がかかっている。あっという間に変化するのが山の天気なのだ。
ここに掲載した写真の中で、景色が最もくっきりと見える。

もう一度、もっと時間をかけて歩き、カメラ技術を磨いて写真を撮ってみたい。
さて、それはいつのことになるのか。





上高地の公式web site (すばらしい写真が多数掲載され、また貴重な情報が得られます)

ブログのTOPブログの目次新保博彦のホームページ

2012年9月7日金曜日

竹島領有権問題:「識者の歴史対話」が必要

李明博韓国大統領が大統領としてはじめて日本の竹島に上陸しただけではなく、さらには天皇に謝罪を要求し、この問題に対する日本政府の親書を突き返すという、唐突な行動が次々と起こされた。
ほぼ同じ時期に起こった、香港の団体による日本の尖閣諸島への侵入に対し、中国政府は比較的冷静に、直接の侵入者とは異なった対応を取った。韓国は、中国とは対照的に、大統領自身が民族意識を扇動し、そのためには日韓の共通の利益を踏みにじろうとしているという点で、きわめて異常な事態である。
大統領の在任末期に大統領周辺の汚職が明らかになり、それへの批判を回避するために、反日意識を煽るということがまたもや繰り返された。韓国の経済が急速に発展し、民主主義的に選出された政権が支配するようになったにも関わらず、事態は一向に改善していない。(この点については、週刊ニューズウィークキノネス(国際教養大学教授、元米国務省朝鮮半島担当官)氏の記事がある)
大統領の今回の行動は、日韓関係の現実を無視し、民主主義的なプロセスも経ず、単に人気取り的な行動で、韓国の民主主義が依然として成熟していないことを示していると言わざるをえない。
これに対して、領土問題に反応の鈍かった日本の民主党政権の対応もさすがに明白になり、竹島問題を国際司法裁判所に提起することになった。当然のことと言えるだろう。
しかし、韓国の現状を見る限り、この問題の解決には相当の時間がかかると思われる。
こうした状態を少しでも改善するためには、経済学者をはじめその他さまざまな分野の研究者が、北岡伸一・政策研究大学院大学教授も主張されるように識者の歴史対話を進める必要があると思われる。その場を含め韓国社会に広く、日本の研究者の研究成果を提出し、できるだけ多くの韓国人の理解を得ることが求められる。
その課題は、もちろん第1に竹島問題があるだろう。これは、国際司法裁判所への提訴と一体に進めなければならない。
第2に、現在の日韓の経済関係についてである。韓国経済の発展に不可欠な役割を果たし続けているのは日本である。戦後も一貫してそうであったが、最近では、日韓の通貨スワップ協定は韓国経済が一時的な危機に陥った時に支える大きな役割を果たすだろう。また、日本からの輸出は、今なお韓国の経済を支えている重要な要因である。
第3に、戦前の植民地時代についての評価である。日本はこの時代に巨額の投資を朝鮮全域に行い、朝鮮経済の近代化に大きく貢献した(新保博彦)。この時期に、韓国人による重要な企業も生まれ、韓国の資本主義は大きく発展した。この点については、第三者的な立場でもあるエッカート教授による有名な研究がある。

ブログのTOPブログの目次新保博彦のホームページ

日系ホテルの海外戦略:ホテルオークラアムステルダム

たまたまあるツアーに参加して、オランダのホテルオークラアムステルダムに泊まることができた。海外に出て、日系ホテルに泊まったのははじめての経験で、さまざまなことを考える機会を得た。
このホテルは、ホテル自体が五つ星であるだけではなく、フランス料理レストラン「シエルブルー」が2つ星、和食堂「山里」が1つ星、「セールレストラン」が「Big Gourmand」に格付けされているそうである。山里で夕食をとったが、月曜日の夜にもかかわらずなんと満席。来客は圧倒的に現地の人が多いそうである。ヨーロッパでの寿司の人気はすごいようだが、ここでも多くの人が、ほぼ日本の寿司と変わらない寿司を食べている。
また、ホテル滞在中には、コンシェルジュの粋な計らいもあった。24時間制となっている貸し自転車を、時間が限られていると言ったところ、短時間を無料で貸してくれた。その他についてもこまやかな日本的なサービスが行き届いていて、本当に心地よい時間を過ごすことができた。

ところで、日系ホテルは、海外ホテルの進出で、国内で苦戦している。オークラも例外ではないらしい。しかし、オークラの有価証券報告書 (EDINET、ここで有価証券報告書を閲覧できます)のセグメント情報によれば、ホテルオークラアムステルダムは日本の売上高の540億円に対し、売上高が40億円にもなり、唯一情報を開示している重要なセグメントとなっている。日本の他のホテルをみても、これほど重要な海外部門はおそらく無いだろう。
今、電機・半導体産業をはじめいくつかの重要な産業が、特にアジア企業の発展や急速に進む円高に非常に苦戦している。このBlogでもシャープの苦闘とホンハイの提携を取り上げた。
このような事態に対応するには、上記の提携などさまざまな方法があるが、積極的に海外に展開することが、その重要な対策になるだろう。日本経済新聞によれば、円高を背景に海外企業のM&A(合併・買収)が増加している。この傾向はしばらく続くだろう。
ところで、日本のホテルの海外展開は、日本文化の海外展開ともなる重要な役割を担っている。それにともなって、日本的な食生活、日本的なサービスが広がれば、日本への国際的な理解もいちだんと深まるだろう。日本のホテルの海外展開に大いに期待したい。

ブログのTOPブログの目次新保博彦のホームページ